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【連載?】僕律!!⑭

2013.07.02(Tue)

『⊢話【僕律!!】』 Comment(4)Trackback(0)
⑭もういやだこいつら





場所は県立律心高校男子バレーボール部。
部長であるリョーヘイは悩んでいた。
謎の「ドッヂボール部」設立において、元々バレー部員であった男子生徒が抜け、今や律高男子バレー部の人数はマネージャー含め8人。
マネージャーであるひなはプレーヤーではないので、抜かすと考えると7人。ギリギリだ。

律高において部活成立のためには5人以上必要という要件から、部活としては成り立つものの7人だけでは紅白戦もできない。
新人戦を終えて来年に向けて練習を積まねばならないこの状況の中、7人というどうしようもない人数がリョーヘイの頭を悩ませていた。

彼の頭を悩ませている要因のもう一つとして、キャプテンであるイツキとマネージャーのひな、2人の存在があげられる。
本来ならば授業を終えて部活無しデーに定められている水曜日のこの時間はミーティングということで、イツキとひなも呼び出してあるはずだった。


しかし、来ない。


性格(というより趣味)に難があるがマネージャー業務はしっかりこなすひなと、普段常に眠たそうでも約束は基本的に守るイツキが来ないとなると何かがあったのでは、と携帯電話を取り出した矢先に部室のドアが開いた。

「あれっ佐久間じゃん。今日部活無いよね?何してんの?」
「…なんだ島崎か」

部室に入ってきたのはイツキではなくリョーヘイの同室者であるリーヤで、あまりにもぞんざいなリョーヘイの言葉にリーヤはへらりと笑いながら口を開いた。

「なんだ、とは酷くない?俺だってここにいたのが佐久間じゃなくて可愛い女の子だったらなー」
「お前ほんと刺されろ。女絡みで事件になれ」
「あっはっは。で、何してんの?」

軽口を叩き合いながら絡んでくるリーヤに、リョーヘイは部誌を見せた。
これからの練習メニューなどが書いてあるそれを見やりながら、リーヤは首をかしげる。

「メニュー考えてるんだよ。紅白戦できないから別メニュー必要だろ。」
「なるほどねー。管理職も大変ですな」
「サラリーマンみたいに言うな。で、イツキとひな知らね?呼んであるんだけど」
「あだっちゃんにひなちゃん?んー見てないわ」
「そうか。ならお前帰っていい」
「相変わらずひどいねー。ショーリに連絡してやらないでもないよ?」
「あー…」

イツキと同級であり同室のショーリならば行方を知っているかもしれない。
リョーヘイはしばらく考えた後、「頼む」とリーヤを一瞥した。
リーヤは慣れた手つきでメールを送信し、部室のドアを開ける。

「ショーリに聞いといた。なんかあったら佐久間に連絡しろとも言ったから」
「お前は?」
「女の子からの呼び出し来たから行ってくるんだー」
「へー。刺されないようにな」
「たぶん平気だと思うよ。じゃね佐久間」

ひらひらと手を振って、リーヤは部室を出ていく。
しばらく沈黙が舞い戻った部室だったが、どんどん近づいてくる足音とともに激しい音を立てて部室のドアが再び開いた。

「ちょっリョーヘイ!イツキが行方不明ってマジ!?」
「……島崎あの野郎」

バタバタと部室に駆け込んできたのは先ほどリーヤが連絡を取っていたショーリで、いったいリーヤに何を吹き込まれたのかは不明だけれどとにかく寮から一目散に部室まで走ってきたようだ。
相変わらずの短絡思考馬鹿なショーリに、リョーヘイは思わずこめかみに手を当ててため息をついた。

「別に行方不明ってほどでもねぇよ。俺はただイツキ何処にいるかって島崎に聞いただけだ」
「なーんだびびったー。事件かと思った」
「事件だったらまずお前には言わない。」
「だよなー警察だよなー」

リーヤよりもへらへらと笑いながら、ショーリは部室の壁にもたれて座った。
小さな机はあるけれど部室には椅子の類が一つもない。部屋の片隅に置かれたジャンプを手にして、ショーリはぱらぱらとページをめくった。

「イツキは知らないけど、そういえばケースケとスミはジャンプ読みに行ったよ」
「どこに?」
「漫喫。なんかスミがケースケにコミックス貸してやったんだけど、どーしてもケースケが続き気になるからって続き全部読みに行くらしい」
「…あいつ馬鹿なの?」
「馬鹿なのかなぁ?方向音痴だからスミ連れてったみたいだけど」

要するにケースケが漫喫の場所がわからないからナビ代わりにスミトを引き連れて行ったとのこと。
相変わらずその同室コンビは権力差が甚だしい。

「あ、でも夕飯には帰ってくるって言ってた」
「…ケースケが不良なのは見た目だけだよな本当に」
「だなー。あいつ何気に成績いいしなー」
「ショーリお前そういえば中間テストの成績」
!!……俺イツキ探しに行こうかな!」
おい待てこら。お前進級できるんだろうな」
「大丈夫!いざとなったら山田先生が賄賂次第でなんとかしてくれる!!」
しねーよ!!山田さんの権力じゃどうしようもねぇよ!!

無造作にジャンプを投げ捨て、ショーリは逃げるように部室を飛び出していった。
ショーリは入学時点で成績がギリギリだったのだから進級もギリギリなのは当たり前。
留年させないようにどうにか手を打たなければいけないのか…と、リョーヘイは部誌のメニュー欄に『ショーリの成績』と書き足した。

ショーリと入れ替わるようにして部室の扉が開く。
今度こそイツキかと思ったけれど、そこにいたのはまた期待外れの人物で、リョーヘイは思い切りため息をついた。

なっ、人の顔見て溜め息って!?佐久間まで俺を邪険にしなくても!!
「…岡田、お前イツキとひな知らね?」

入ってきたのはライトプレーヤーであるレイジ。
喚くレイジを丸ごと無視してとりあえずリョーヘイは要件を述べた。
期待はしていなかったようだが、レイジはリョーヘイの言葉にはっとしたように口を開いた。

「安達!!そーだよあの安達の野郎!俺も探してるんだよ!!」
「あー知らないなら良いや。じゃあな」
「あっでもひなさんは見た」
「マジ?」

予想外なところからのヒントに、リョーヘイはレイジを見やる。
うんうんと頷きながらレイジは記憶をたどるように話し始めた。

「授業後にさ、今日こそひなさんをデートに誘おうと後ろから話しかけるタイミング伺ってたんだけど途中で見失っちゃったんだよなー」
「お前ついにひなのストーカーになったの?」
「ストーカーじゃねぇよ!!俺のひなさんに対するこの気持ちは…!」
「はいはい、で、どこに居たって?」
「校門を出てくところまではなー…西友の近くの角あたりでちょっと車に轢かれかけてたらいなくなっちゃってて」
「へえー」

冷めた面持ちで適当にレイジの話に相槌を打っていると、リョーヘイの携帯ランプが点滅した。
メールの着信を知らせる色だ、彼は画面の文字を見つめた。


『To リョーヘイ

  ごめんなさい、今日ミーティングだったわよね?
  ケースケがスミを拉致してった現場に遭遇したからつい追っちゃったの
  漫喫でしけ込んでよろしくやってくれるかと期待してたんだけど、
  たぶん今日も進展無さそうだから今から部室向かいます。
  遅れてごめんね。

                      ひな 』



「……ストーカーをストーキングして撒かれたんだな、お前」
「え?」
「別に何でもない。」



要するにひなはケースケとスミトをストーキングしてレイジはそのひなをストーキングしていたらしい。
再び大きな溜め息をつきながら、リョーヘイは今度こそ部員たちの将来を心配した。

「つーか安達は?あいつ俺にビデオ買ってこいって命令した癖に何処にもいやがらないんだけど!」
「ビデオって…」

このご時世に。罰ゲームでもしているのだろうか。
地団太を踏むようにレイジが言った矢先に、がらりと部室の扉がまた開いた。
先ほどのメールからひながやっと来たのかと思いリョーヘイがそちらを見やったが、ひなではなく探していた張本人のイツキが立っていた。

「安達てめー!ビデオ買わせて何処行ってたんだ!!」
「りょーちん遅れてごめん。」

扉付近で憤慨しているレイジのことはいつも通りスルーで、イツキは机を挟んでリョーヘイの正面に座った。
どうやら今日がミーティングだと覚えてはいたらしい。

「あ、もっさん此処にいたんだ」
「さっきからいるわ!!お前より早くいるんだよ!!」
「ビデオ買ってきた?寮の管理人さんに渡しといて」
「はぁ!?なんで俺が」
「『中間テストで俺が勝ったら』?」
「……『何でも言うこと聞いてやるよチクショー』!!」


叫ぶだけ叫んで出ていくレイジを振り向きもせず、イツキは持参したペットボトルのお茶を飲んでいた。

「…何あれ。また岡田お前に喧嘩売ってたの?」
「うん。中間テストで俺がもっさんに負けたら正セッターにさせろって。いつものやつ」
「いつものな……で、なんでビデオ?」
「それがさ!!」

無表情だったイツキが突然嬉々として机に身を乗り出した。
反してリョーヘイは少し引いた。

「必殺仕事人の再放送が今夜あるんだよ!!」
「…で?」
「管理人さんにビデオとっといてくれって頼みこんでたらこんな時間に」
「…。」
「あー管理人さんが京様ファンでよかった。」

嬉しそうに語るイツキに、リョーヘイはまたしても溜め息を吐いた。
もう今日何度目かよく分からない。
バレーボールをやっているときはまだ部員全員まともに見えるのに、普段はどうしてこんなにダメ人間ばかりなんだろう。

「……練習メニューの話に移っていいか?」
「いいよ」
「じゃあ明日からだけど――」

リョーヘイの言葉を遮るように、また、扉が開け放たれる。
にこにこと満面の笑みを湛えたひなが仁王立ちしていて、彼女は懐から取り出したノートを机の上に広げた。


表紙:『マル秘ノート⑤


「いけない、ごめんなさい、こっちじゃなかった」
…。

⑤というナンバリングから彼女の妄想のネタがすでに4冊の大学ノートを犠牲にしたということが伺える。
その中身で自分がどう位置づけされているかなど恐ろしくてリョーヘイは聞けないので、黙ってひなが差し出した部活ノートを見ていた。

「練習試合してくれそうな学校一覧作ったの。」
「マジだ、すごい。結構あるね」

ただ純粋に感心しているイツキの隣で、リョーヘイはまた、隠れるように溜め息をついた。


(……普段もこのくらい真面目だったら)


そんな彼の思考は、ひなの膝の上にある『マル秘ノート⑤』がその文字だけでかるーく粉々に玉砕してくれていた。





久々に。
冬合宿ネタとか言ってたくせにこれだよw

ピクシブの方でもあげました。内容同じだからリンク意味ないね。
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コメント
はじめまして、Stellaの隠れる管理者アイキと申します
今回は、参加ありがとうございます

読ませてもらいました
これは今までブログ内で続けていたものを出されたようですね
この回しか見れていないので、話の筋がよく掴めず申し訳ありませんが、入れ替わりやってくるキャラは非常に個性的だと思いました

マル秘ノートも面白みがあるアイテムですね
妄想キャラだと一発でわかってしまえストーリー内で気に入りました

以上です。
篠原藍樹 2013.07.11 21:37 編集
>アイキさん

はじめまして、お読みいただきありがとうございます!
Stellaにも初参加させていただき、ありがとうございます。
初参加…ということで何を投稿しようか迷った挙句、大体キャラも全部出てお手軽なこの話にしてしまいましたf(^_^;

感想嬉しいです!
お言葉のとおり、ひなさんは部員で妄想して楽しんでいる子です(笑)
気に入っていただきありがとうございます♪
川魚 2013.07.11 22:50 編集
Stellaに投稿しているサキと申します。
遅くなってしまいましたが、読ませていただきにやってきました。

日常生活がそのまま書き綴られたような物語ですね。
というか、作者の思いとか夢のようなものが、そのまま出てきたような気もしています。
たくさんの友達はそれぞれ個性的で、でもとてもいい奴っぽくて、楽しい生活が送れそうです。
シリーズを最初から読んでいないせいもあるのでしょうか?ニックネームと本名のギャップについていくのがちょっと大変ですが(どれが誰だか検索かけないと分からなくなるときがあります)、温かい雰囲気でとても楽しくて、そして読みやすいです。
ひなの『マル秘ノート⑤』(⑤って!)、中身に期待してしまいますね。
ではでは。
山西 サキ 2013.07.17 23:32 編集
サキさん、初めまして。ご訪問ありがとうございます。
感想嬉しいです、ありがとうございます!
キャラが多く、また各自呼び名も違うところが正直自分でも難点だと思っておりました…(笑)
セリフだけで進ませることが多い作品ですので、読みやすいと言っていただけて嬉しい限りです。
おそらく作者よりも、ひなの方がキャラ同士の妄想を繰り広げ創作をしていると思います。

私の方も遅くなってしまって申し訳ありませんが、またサキさんのお宅にもお邪魔させていただきますね!
ありがとうございました、これからもよろしくお願いします^^
川魚 2013.07.18 10:03 編集
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▼ プロフィール

川魚(かわうお)

Author:川魚(かわうお)
Birthday:03/18


オリジナル小説を主に書いてます。作品の感想などいただけると嬉しいです。

-Pixivにて「かわうお」で活動しています
イラスト中心です。長編小説のキャラ絵を自己満足に描いてます。

-小説家になろうにて「川昌 幸」で活動中
当ブログの過去作をリメイクして掲載しています。

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